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<解説・異論・反論>
最近、よく見聞きするのが空家問題ですね。少子高齢化に伴い、特に地方・郊外といったエリアで空家の増加が指摘されています。直近の数字としては空家は820万戸、空家率は13.5%となっており、まだまだ割合としては低いものの、無視できない規模であるのは間違いありません。
もちろんこの数字の中には、更地にしてしまうと税金が高くなってしまうことから、老朽化して住めないけれど税金対策として住宅のままにしてある「戦略的空家(?)」も一定割合含まれているとは思いますが、しかし総じて住宅需要が減少しつつある地域があることは事実ですね。
そのように借り手もいない買い手もいない状態になれば、住宅の資産価値はほぼゼロとなり、「家は資産」という常識が全く通用しないことになりますが(そうした場合、むしろ税金負担を考えれば「家は負債」と言えるのかもしれません。会計として正しい表現ではなくても。)、ではこのように「空家問題」がクローズアップされつつある中、われわれ庶民の「持ち家意識」はどのように変化しているのでしょうか?
その答えとなりそうな調査を、全国宅地建物取引業協会連合会などが一般消費者向けに「不動産の日アンケート」として実施していますね。気になる「持ち家派と賃貸派の割合」はこのようになっています。
やはり、と言うべきなのか、意外に、と言うべきなのかはわかりませんが結果的に見れば「持ち家派」の圧勝ですね!持ち家派は85%、賃貸派は15%ということで「持ち家意識」は圧倒的ということになります。住宅への愛着はもはや日本人のアイデンティティなのかもしれません。
ただ一方でこの6年の推移をみると、持ち家意識がほんの少しずつではありますが後退しているようにも見えます。2009年の調査時には88.9%で、2014年には84.7%ですから約4%減少しているのですね。これがたまたまなのか、そうでないのか、気になるところです。
ちなみに興味深いのはこの持ち家意識は年齢によっても少し異なるということです。
微妙な差ではありますが、40代が最も低く、逆にそれより上の世代でも下の世代でも持ち家派は増えていくのですね。40代といえばバブル世代であり消費意欲が旺盛な一方で、30代・20代は不況世代であり保守的であるというイメージがありますが、その印象通りの結果と言えるかもしれません。
もちろんシェアで見れば、どの世代も「圧倒的に持ち家意識が高い」ことに変わりはありませんが・・・。
さて「持ち家派」・「賃貸派」ともに言い分があるわけですが、やはり気になるのは多数派である「持ち家派」の方ですね。そうしたわけで持ち家派の根拠を聞いた結果はこのようになっています。
1位は予想通り「家賃を支払い続ける事が無駄に思えるから」で約6割、そして2位に僅差の3位は「持家を資産と考えているから」で約4割。つまり「経済合理性」を前面に押し出しているわけですが・・・残念ながらこれはかなり怪しいですね。
これまで何度かご案内しているように、30年といった期間で考えると持ち家も賃貸も金銭的な負担はほとんど変わりません。
だとすると「家が残る分だけ持ち家の方がよい」と思われる方もおられるかもしれませんが、築30年の家を思い浮かべていただくと・・・戸建てにしてもマンションにしてもその資産価値はほとんどなくなっています。加えて老朽化が進んでいるという点では、これから多額の修繕費や建て替え費用が発生してくるわけで、そう考えると30年目以降も賃貸との大きな差は生まれにくいと言えます。
加えてこれからは、「老後は老人ホーム」というパターンが増えてくるでしょうから、持ち家派であったとしても30年〜40年後には自宅を手放すのだとすれば尚更、賃貸との経済的な負担の差は生まれにくいということですね。
したがって極論を言えば、この「家賃を支払い続ける事が無駄に思えるから」 や「持家を資産と考えているから」という考え方は「全くの誤解」である、と言うこともできそうです。ケースバイケースではあるのですが。
さらに言えば賃貸派の場合「住宅ローン破綻」のリスクがゼロという点で、むしろ経済合理性を突き詰めれば「賃貸派の勝ち」と考えてもあながち間違いではありません。
しかし。
最後に持ち家派・賃貸派の満足度をチェックしてみるとこのようになっています。
つまり、持ち家の満足度の平均が73点と、賃貸の満足度の平均の65点を大きく上回っているのですね!
もちろん、それぞれの回答者数は持ち家:9,593人と賃貸:6,344人となっており、賃貸の中に「持ち家派だけれど今は賃貸に住んでいる」という方が多数含まれているわけで、そうした潜在的な欲求不満が足を引っ張った可能性は少なくなさそうですが、結果を素直に見れば持ち家の方が賃貸より満足度は高いと言えます。
だとすると、その根拠が正しいかどうかは別にして、結果論としては「家を買ってよかった」と満足している人の方が多数派ということですね。やはり住宅への愛着は日本人のアイデンティティなのかもしれません。つまり「理屈ではない」ということです。
ただし、持ち家にせよ賃貸にせよ、経済合理性から言えば優劣つけがたいとすればその「理屈ではない」という決め方は、「結構正しい選択方法」と言えるのかもしれませんね。
参考になさってください。